これまでは、不動産登記の申請をする場合において、申請人が会社などの法人であるときは、法人の登記簿謄本(履歴事項証明書)などを登記申請書に添付する必要がありました。
法人が上記の書面を求められたのは、以下の 2 つの根拠に基づきます。
(1) 法人が登記申請人である場合における当該法人の「代表者の資格を証する書面」として
(2) 法人が所有権を取得して不動産の登記名義人となる場合や、不動産登記に登記されている法人の住所を変更する場合の登記を申請する場合における、当該法人の「住所を証する書面」として
しかしながら、法令の改正に伴い、平成27年11月2日以降に不動産登記を申請する場合においては、上記の書面を添付する代わりに、「会社法人等番号」を申請書に記載すれば足りる、という取り扱いに変更になりました。
ここで、「会社法人等番号」とは、法人の登記簿に記録されている 12 桁の番号を指します。(※具体例として、以下の履歴事項全部証明書の抜粋をご参照ください。
なお、類似のものとして、マイナンバー制度により各法人に指定されている「法人番号」(13桁)がありますが、これは、登記簿に記録された会社法人等番号の前に1桁の数字を付したものです。
上記(1)の根拠に基づくケースの場合は、会社法人等番号を登記申請書に記載するという取り扱いの方が原則ですが、代表者の資格を確認することができる書面を添付すれば、会社法人等番号を登記申請書に記載することは不要となります。
ただし、従前とは異なり「作成後1か月以内の登記事項証明書」を添付しなければならなくなった、という点に注意が必要です。
また、上記(2)の根拠に基づくケースにおいて、不動産登記に登記されている法人の住所の変更の登記を申請する場合、登記簿謄本の添付を省略することができるのは、「現在の会社法人等番号で登記記録が確認可能なもの」に限られます。
というのも、平成24年5月20日以前の国内法人の登記においては、組織変更や他の法務局の管轄への本店の移転の登記等をする際に、会社法人等番号がその都度変更されてしまっていました。
そのため、この変更前の会社法人等番号が記録された登記記録に住所の移転の事項が記録されているときは、現在の会社法人等番号の提供に加えて、住所の移転の履歴を確認することができる「閉鎖登記事項証明書」又は「閉鎖登記簿謄本」を添付しなければならないという点が要注意です。
不動産登記の当事者となる会社のコストが軽減されうるのは歓迎すべきことです。
しかし、本人確認の問題も含め、上記書面の添付の要否については、引き続き慎重な判断が求められるでしょう。
執筆者紹介
塩足司法書士事務所
司法書士