不動産賃貸の保証金はインボイスにも要注意!

不動産賃貸の保証金はインボイスにも要注意!

不動産賃貸の実務において、オフィス等を賃貸する場合に、保証金として家賃の数か月分を支払うことが一般的に行われています。

これらの保証金については、契約が終了しても返還されない(償却する)保証金の額が設定される場合があります。

例えば、借主から貸主へ6ヶ月分の保証金を支払う場合に、契約の時点で2ヶ月分の保証金は返還しないことが確定していた契約だったとしましょう。

この場合、契約の段階で保証金6ヶ月分のうち2ヶ月分は返還しないことが確定していますので、貸主では収入計上、借主では経費計上することになると考えるのが、所得税、法人税の世界でのお話です。

では、この設例の場合に、消費税の世界、特に今年10月から導入されるインボイスについては、どのように考えるべきなのでしょうか。

オフィス等の賃貸借契約時に借主が支払う保証金について、賃貸借契約の終了等に伴い返還するものは消費税が不課税となりますが、借主に返還しない保証金は資産の譲渡等の対価として、オフィス等の事業用であれば消費税の課税対象とされています。

また、返還しない保証金の課税資産の譲渡等の時期、すなわち貸主の課税売上・借主の課税仕入の計上時期は、返還しないこととなった課税期間とされています。

そのため、設例のように、契約締結時において、すでに返還しない保証金の額が存在する場合には、インボイス制度開始後は、借主の求めに応じて、貸主はインボイスを交付する義務が生じると考えられています。

インボイスを交付した場合には、その控えを保存する義務も生じることになります。

また、一定期間経過ごとに、返還しない保証金の額が確定する契約の場合にはどうなるでしょうか。

この場合には、一定期間経過ごとに返還しないこととなる金額につき課税資産の譲渡等があったものとして、貸主は課税売上げ、借主は課税仕入れを計上するため、その都度、当該金額分に係るインボイスの交付・保存が必要になります。

ただ、実際の不動産賃貸の実務を考えますと、保証金に関して契約書に記載し、そのやり取りがあった際の領収証の受け渡しは行われていることが多いと思いますが、「返還不要が確定した場合の保証金の取り扱い」については、周知が徹底されていないと感じます。

過去に相談者が作成した決算申告書を、弊所にて確認した際にも、返還不要が確定している保証金がそのまま預り金として処理されている(所得税、法人税の計算上、収入計上されていない)事例も散見されます。

そこに、新たにインボイス制度が加わることで、交付・保存する書類が増えることになります。

賃貸料が消費税の課税売上になるオフィス等の賃貸借契約を締結される場合には、インボイス制度への対応も今一度確認した方が良いでしょう。

今回の執筆者

花光慶尚

花光慶尚税理士事務所
税理士

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