宅地建物取引業を行うのに必要な宅地建物取引士について⑥

宅地建物取引業を行うのに必要な宅地建物取引士について⑥

小職は、脱線するのが好きである。

と言っても汽車の事ではない。

話の脱線である。

一見すると無駄な時間の浪費に思えなくもない。

脱線というと場合によって痛ましさも感じられそうなので、「脇線」と言っておこう。

本線の話だけでは気づくことが出来ない事項に気づかされることがままある。

この発見が好きなのであろう。

ただ本線の話を軽んじているのでは決してない。

本線の話は充分に論理的に思考を巡らせる事が必要なのであるのは言うまでもない。
まずこの基本の上に立ってこその脇線である。

ロジカルシンキングとラテラルシンキング、垂直思考と水平思考、右脳と左脳。表す言葉は沢山あれど、この思考間のやりとりを繰り返すことが柔軟且つ堅固な考えにたどり着く道ではないかと思っている。

いささか脱線・・・いや、脇線が過ぎたようなので、そろそろ本コラムの本線に話を戻そう。

「宅地建物取引業者は、事務所ごとに、国土交通省令で定める数の専任の宅地建物取引士を置かなければならない」

ここで言う省令で定める数とは、当該事務所で宅建業務に従事する者の数の 5分の1以上の割合であることは以前にも説明した。

では、「専任の」とは、どのような状態を言うのか?

東京都の不動産業課が発行している宅地建物取引免許申請の手引によると、専任の宅地建物取引士は、①当該事務所に常勤して(常勤性)、②専ら宅建業の業務に従事する(専従性)ことが必要だとされている。

つまり、この「常勤性」と「専従性」の二つの要件を充たすことによって、「専任」性が認められるのである。

また、同手引書には、専任に当たらない例として、他の法人の代表取締役、代表者又は常勤役員を兼任している者、他の職業に従事している者、社会通念上における営業時間に勤務できない者、通勤不可能な場所に住んでいる者などを挙げている。

この中で実務上、問題となりやすいのは「他の法人の代表取締役」等を兼任する場合ではないだろうか。

例えば、自分の宅建業を営む会社(A社)で専任の宅地建物取引士となっている社長が、不動産管理業を行うための会社(B社)を立ち上げたいと考えた場合、そのB社の代表取締役に自らが就任すると、A社の「専任の宅地建物取引士」であるための条件を欠くことになる。

「B社で宅建業免許を受けるわけではないから、問題ないんじゃないか?」 そんな声が聞こえてきそうだが、専任の宅地建物取引士は、他社の代表取締役を兼任できないのである。

次回は、専任の宅地建物取引士に求められる「専任性」について、さらに掘り下げて行こうと思う。

執筆者紹介

佐藤栄作

佐藤栄作行政書士事務所
行政書士

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