エリザベス女王崩御と相続税【ニュースから掘り下げる税金コラム】

エリザベス女王崩御と相続税【ニュースから掘り下げる税金コラム】

イギリス史上最も長く君主を務めたエリザベス女王が9月8日に崩御され、19日にロンドンのウェストミンスター寺院で国葬が執り行われた。国葬には天皇陛下をはじめ、各国の王室や首脳が参列し、女王の人柄と影響力の強さを感じさせている。

さて、女王崩御、即ち、相続が発生したことになるが、ここで注目されることの一つに新国王に即位したチャールズ3世が女王から相続した財産には相続税が課されるか?ということがある。イギリスにも相続税は存在するが、報道によれば、「君主から君主へ継承される資産は私的な所有物とはいえ公的な性質や機能が強い」ことから相続税が免除されるとのことだ。

日本の相続税法においても、お墓や日常礼拝の用に供している仏具などは相続税の非課税財産とされているし、皇室においては皇位と共に引き継がれてきた三種の神器については相続税が課税されないとされている(なお、平成から令和になった際は、生前退位(譲位)によるもので、崩御(相続)によるものではなかったため、そのままでは三種の神器に「贈与税」が課されてしまうことから、三種の神器が贈与税の非課税財産になるよう法律も手当てしたという経緯がある)。課税の公平という視点は、税金を考える上で大切なポイントの一つだが、税を課することで必要以上に不都合が生じるのも好ましくないので、国側も配慮するところはしている訳である。

ただ、2017年に大手法律事務所から流出した「パラダイス文書」には、タックスヘイブン(租税回避地)を利用し税逃れをしていた世界各国の首脳や王室関係者、著名人に関する情報が記載されており、この中には女王の個人資産がケイマン諸島のファンドに投資されたと記載されていた。これは大英帝国の旧植民地が、現在のタックスヘイブンへと繋がっているという歴史的な経緯も押さえておくと理解しやすいのだが、王室の伝統や権威など公的役割を果たすのに必要な財産だけでなく、私的な財産に位置づけられるものについても相続税の負担を負わないのか、興味深い点でもある。

なお、イギリスでは、君主は相続税だけでなく、所得や資産の売買益にも納税の義務がないとされているが、女王は1993年以降、一般市民と同じように自発的に納税してきたという。日本では、昭和天皇崩御の際には、遺産として総額約20億円が残され、これを香淳皇后と現在の上皇陛下が相続され、上皇陛下が約4億2800万円の相続税を納めたとされている。

今回の女王の国葬は生中継されていたので、日本でもテレビを通して見ることが出来た。画面越しでもイギリス王室の長い歴史と格調の高さを感じさせる、荘厳な葬礼だった。偉大な女王が残した功績を、新国王チャールズ3世がどのように継承していくのか、イギリス国民だけでなく、世界の人が注目しているといえよう。

執筆者紹介

花光慶尚

花光慶尚税理士事務所
税理士

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