相続トラブルになりやすい「遺留分」とは?~後編~

相続トラブルになりやすい「遺留分」とは?~後編~

宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の三好貴大です。

前回は、「遺留分」を理解するために必要な基礎知識として、「相続の範囲(順位)」と「法定相続分」について解説しました。

【前回の記事】相続トラブルになりやすい「遺留分」とは?~前編~

では、法定相続分通りに相続しなければいけないかというと、そうではありません。

相続人間で合意が成立すれば、長男が全部、次男は無とすることもできますし、遺言書が残されている場合は、基本的にはその内容で相続することになります。

しかし、前回紹介した例のように、相続人が長男と次男の二人だった場合で、「長男が全財産を相続する」という遺言書が残されていた時に出てくるのが「遺留分」となります。

1.「遺留分」とは?

民法では一定の相続人に対して、一定の相続分を確保しておいてあげようとする定めがあり、それが「遺留分」となります。

つまり、「長男が全財産を相続する」という遺言書が残されていた場合でも、次男に一定の相続分を確保するための制度となります。

遺留分の割合は、原則として「法定相続分の2分の1」となります。ただし、相続人が直系尊属(父母や祖父母)だけの場合は3分の1となります。

「相続人が直系尊属だけの場合」というのはイメージが湧かないかもしれませんので、こちらは後述します。

ちなみに、兄弟姉妹には遺留分はありません。

4分の1の遺留分があると勘違いしているケースが多く、法定相続分と間違えないように注意して覚えましょう。

2.遺留分の割合の一例

例えば、相続人が長男と次男の二人だった場合は、法定相続分は以下のようになります。

【法定相続分】

長男:2分の1
次男:2分の1

しかし、「長男が全財産を相続する」という遺言書があった場合は、以下のようになります。

【前記遺言書あり】

長男:1分の1
次男:無

次男が異議申し立てをしなければそのように相続されますが、もし次男が遺留分を請求した場合は以下のようになります。

【次男より遺留分を請求】

長男:4分の3
次男:4分の1

つまり、次男の法定相続分は2分の1でしたが、遺留分は法定相続分に対して2分の1となりますので、次男には4分の1の遺留分を請求する権利があります。

3.法定相続人に親がいる場合

相続人が配偶者と親の場合、法定相続分は以下となります。

【法定相続分】

配偶者:3分の2
親:3分の1

しかし、「妻が全財産を相続する」という遺言書があり、親から遺留分を請求した場合は以下のようになります。

【前記遺言書あり】

配偶者:6分の5
親:6分の1

4.その他の例

ちなみに、先ほど「相続人が直系尊属(父母や祖父母)だけの場合は3分の1」と紹介しましたが、これは法定相続人が親だけの場合で、「甥っ子に全財産を相続させる」という遺言書が残っていた時に適応されます。

本来の法定相続分は以下となります。

【法定相続分】

親:1分の1

【前記遺言書が残っていた場合】

甥っ子:1分の1

【親が遺留分を請求した場合】

甥っ子:3分の2
親:3分の1

ちなみに重複しますが、兄弟姉妹には遺留分はありませんので、「自分には配偶者も子供もいないし、親はすでに亡くっている。仲の良い妹には相続財産を渡したいけど、親の相続で喧嘩になった兄貴には渡したくない!」などと考えている場合は、遺言書を残せば基本的には解決できます。

5.まとめ

つまり、「誰に何を相続させたいか?」を考え、相続財産の棚卸を終えたら、その相続を行うことによって「遺留分で揉めることはないか?」を検討していかなければいけません。

私の周りでも、「あの時、遺留分のことを知っておけば・・・」と後悔されている方の声は多方面から聞いています。

【日本司法支援センター 法テラス】遺留分とは何ですか?
https://www.houterasu.or.jp/app/faq/detail/00249

では、遺留分の対策は具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか?

次回は対策の具体例について解説します。

今回の執筆者

三好貴大

株式会社東京レント ソリューション事業部
宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士

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