政府が掲げる「新しい資本主義」への取組みとして、ビジネスパーソンの間で副業や起業が広がっています。
将来の予測が困難なVUCAの時代と言われる昨今、企業においては人材が流動化し、雇用が不安定となりつつあります。
私たちは「人生100年時代」を見据え、セカンドライフに備えることが重要な課題となっています。
本稿では、ビジネスパーソンの副業や起業の有力な選択肢として注目される「民泊」の可能性と留意点を解説します。
民泊とは?
民泊とは、住宅を活用して提供される宿泊サービスをいいます。
自宅の空き部屋や別荘等を、インターネットを通じて旅行者に1泊単位で提供する「民泊仲介サイト」の登場により、ホテルよりもリーズナブルな価格で現地の住生活を体験できる民泊は、世界中で一大ブームとなりました。
日本でも、近年の訪日外国人旅客の急増を受け、東京・大阪といった大都市圏を中心に、民泊が急速に普及しました。
新型コロナウイルスの感染拡大後は、一般的なホテルよりも独立性が高いことから、日本人旅行者にも好まれ、宿泊形態の選択肢として定着しました。
民泊を規制する法制度
我が国における民泊には、ホテルや旅館といった宿泊施設の営業者を規制する「旅館業法」が適用されます。
旅館業法は、有償の宿泊サービスを継続反復的に提供する行為を公衆衛生の観点から許可制としており、違反者には、6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金を処する旨を定めています。
民泊仲介サイトを通じて、住宅において、有償で宿泊サービスを継続反復的に提供するには、原則として旅館業法の許可を受ける必要があります。
規制緩和により事業参入が容易に
近年、民泊ビジネスを副業・起業を検討したい国民の声を受け、観光立国推進を目指す政府は、近年、民泊企業のハードルを下げるために以下3つの規制緩和を打ち出しました。
①国家戦略特別区域法に基づく外国人滞在施設経営事業(特区民泊)
特区民泊は、国家戦略特別区域に指定された自治体の一部(例:東京都大田区、大阪市)でのみ利用可能な制度です。
客室面積25㎡等、一定の要件を満たした住宅で特区民泊の許可(特定認定)を受ければ、2泊3日の最低滞在期間の設定を条件に、旅館業法の許可なしで民泊を営むことができます。
②住宅宿泊事業法(民泊法)
民泊法は、全国的に民泊を解禁する制度です。
民泊法の下、年間180日以下の民泊は「住宅宿泊事業」と位置付けられ、簡易な届出をすれば、旅館業法の許可なしで同事業を営むことができます。
ただし、自治体の条例によっては住宅宿泊事業の実施が制限されることがあるので注意しましょう。
③旅館業法の改正
旅館業法の近代化・合理化を図る改正が行われ、「ホテル営業」と「旅館営業」が「旅館・ホテル営業」に統合されました。
最低客室数の基準が撤廃され、また、本人確認を行うタブレット等のICT機器を設置等すれば、フロントの設置が不要となるなど、小規模事業者でも旅館業を営みやすくなりました。
まとめ
民泊ビジネスを始めるには、まず法律を正しく理解し、適法に営業をすることが重要です。
まずは事業を展開しようとする地域と運営施設の状況を確認し、どの制度を選択するかを検討し、必要な設備を整えて手続きをしましょう。
宿泊者に喜ばれ、施設の近隣住民からも理解を得ながら事業を展開していきましょう。
今回の執筆者
日本橋くるみ行政書士事務所
行政書士