昨年4月、最高裁が不動産を使った過度な節税を否定する判決を下しました。
土地を路線価ベースで評価し、借入金による相殺で相続税をゼロと申告した納税者と、これを認めない国税当局との争いでしたが、国税当局の言い分が通りました。
「露骨な節税は公平性を損なうのでNG」という判決ですが、納税者が採用した不動産の評価方法はごく一般的なもので、インパクトの大きな判決でした。
また、昨年12月に開示された与党税制大綱において、相続時のマンション評価を路線価ベースで行うと実勢価格と乖離するので適正化する方針が示されたのも記憶に新しいところです。
路線価をベースにした相続税評価に揺らぎが見えます。
とはいえ、一気に全てが変わるとは思えず、路線価を使った評価方法が主流から外れる可能性は低そうです。
不動産の相続を考える場合は、その基礎となる路線価がどういうものか理解することが今後も大切です。
皆様ご承知のとおり、道路ごとに設定された1㎡当たりの価格が路線価です。
路線価は2種類あり、1つは国税庁の相続税路線価、もう1つは各自治体が土地の固定資産税算定を目的に設定する固定資産税路線価です。
固定資産税路線価に注目が集まる機会は比較的少なく、単に路線価という場合は相続税路線価を指すことが大半です。
各路線価の価格水準は、地価公示の公示価格を10として、相続税路線価:固定資産税路線価=8:7が目安です。インターネットで「全国地価マップ」と検索すれば、どちらの路線価も閲覧できます。
そしてここが重要なポイントですが、路線価はその道路に面する標準的な土地を前提に設定されています。
したがって、同じ道路沿いの土地と比べて個性が強い土地(例:間口が狭い、形が悪いなど)では、個性に応じた補正が必要です。
相続税申告の際にも補正計算するわけですが、機械的な計算式では実態に即した補正ができないケースもあります。
間口が狭い再建築不可の土地がその典型例で、私も何度か不動産鑑定の相談を頂いたことがあります。
人間と同じように、土地も完全に同じものが存在しないという意味で個性的ですが、その中でも特に個性的な土地は評価が難しいという現実があります。
路線価やその計算基準は便利でよく出来ていますが、常に正確な評価額を導ける万能ツールではありません。
個性の強い土地を所有している場合は、その個性の存在を認識し、他の土地とどう違うのかを把握することが大事です。
悩ましい時には専門家に相談するのもよいでしょう。転ばぬ先の杖になるはずです。
今回の執筆者
株式会社秋葉原不動産研究所
不動産鑑定士