昨年12月16日に令和5年度税制改正大綱が公表され、同月23日に閣議決定されました。
この中で、高額所得者やいわゆるタワマン節税に対する対応についても触れられています。
高額所得者への対応としては、基準所得金額から特別控除額(3.3億円)を控除した金額に、22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超えた場合に、その超過した差額を追加的に申告納税することとされました。
所得税の税率構造は超過累進税率を採用しているので、基本的には所得が増加するほど所得税負担率も増加することになりますが、高額所得者ほど株式等や土地建物の譲渡所得の割合が高いことから、合計所得金額1億円を境に所得税負担率が低下する、いわゆる「1億円の壁」の問題が指摘されていました。
今回の改正は、この問題に対する対応と考えられます。
この改正は、令和7年(2025年)分以降の所得税に適用されます。
ここで「基準所得金額」の考え方がポイントになってきます。
この基準所得金額は、申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額とされています。
つまり、確定申告を要しない配当所得の特例や上場株式等の譲渡による所得の特例を適用したことにより申告不要とされた所得も合算することになります。
普段はそこまで大きな所得がなかったとしても、不動産の譲渡を行ったことで、その年だけ所得金額が増加するような場合には、この規定が発動する可能性があるので注意が必要です。
また、いわゆるタワマン節税に関しても与党税制改正大綱で触れられています。
タワマン節税は、マンションの相続税評価と市場での売買価格の乖離に着目した節税スキームですが、タワマン節税を否認した令和4年4月19日最高裁判決に代表されるように、財産評価基本通達に基づくマンションの相続税評価額が否認される事案が散見されることから、納税者の予見可能性を確保する必要が出てきています。
このような視点から、「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」として、評価方法の見直しを示唆しています。
与党税制改正大綱の中では、具体的にどのように見直されるのかは触れられていません。
ただ、相続税申告の実務で用いる財産評価基本通達は、国会の議決により成立する「法律」ではなく、行政機関(この場合は財務省)が発する「通達」であることから、財産評価基本通達の改正ということで、今後情報が示されると考えられます。
引き続き注視していく必要があるでしょう。
今回の執筆者
花光慶尚税理士事務所
税理士