~なぜ東京都は太陽光パネル設置を義務付けたのか~
2022年12月、東京都は条例で2025年4月から新築住宅に太陽光パネルを設置することを義務化しました。
太陽光パネルの設置義務が課されたのは、住宅を注文する個人(施主)ではなく、ハウスメーカーなどの事業者であり、都内において延床面積の合計で年間2万㎡以上供給している事業者に対してです。
それ以外の事業者やすでに建物を所有している家主への義務付けは今回見送られましたが、遅かれ早かれ太陽光パネルの設置等の対策をせざるを得なくなるのではないかと個人的には考えています。
この背景にあるのは、紛れもなく世界中が邁進する脱炭素化の流れです。
日本も2030年度には2013年度比で46%減の目標、2050年には排出ネットゼロを目指しています。
そのため、国は2021年に地球温暖化対策推進法が改正し、まだ努力義務にすぎませんが地方自治体にも地域の脱炭素化を積極的に推進することを義務化しました。
さて、東京都はどのようにしたら脱炭素を目指せるのでしょうか?
言わずもがな、東京都は電気の大消費地です。にもかかわらず、利用できる自然エネルギーは非常に限られています。
この点、他の自治体であれば、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱などを組み合わせて活用できるのですが、東京都では太陽光以外の自然エネルギーの利用が難しいのです。
そして、東京都にある建物の屋根全てに太陽光パネルを付けても足りないです。
そのため、最終的には他の自治体で建設された再エネ発電所から電気を買わざるを得なくなります。
この点、一つの国なのだから自治体間で協力し合い、電気を融通しあえばいいと考えるかもしれません。
しかしながら、東京都以外の自治体もそれぞれが脱炭素の目標を達成しなければならず、その地域の発電所で発電した電気は、まずその地域で消費したい、安く住民に提供したいと考えるのが自然だと思います。
そして、昨今、東北地方で住民が風力発電所建設に反対するようになっており、発電所を建設したくてもできない事例が散見されるようになっています。
特に、都市部の事業者が地方に行き発電所を建設することに対し、嫌がる雰囲気も感じます。
まずは東京都としてできることをやる。
そのために、今回条例で太陽光パネル設置義務を定めたのだろうと思います。
他の自治体が義務付けしていないのに東京都だけやる必要があるのかと思うかもしれませんが、繰り返しになりますが他の自治体と比較して東京都は電力の消費量の多い一方、自然エネルギーのポテンシャルは極端に少ないです。
東京都では太陽光発電に大きく頼らなければならず、そのためには今からでも動かざるを得ないという事情があるように思います。
さて、太陽光パネルの設置には電気代が安くなるというメリットがありますが、反面、建物を建てる際において初期コストが嵩むというデメリットもあります。
そのデメリットはどのようにしたら解消できるのでしょうか。
後編ではそのあたりをお話ししたいと思っています。
今回の執筆者
株式会社自然エネルギー市民ファンド
弁護士