国税が公表する相続税の申告事績と調査等の状況から何が分かるか?

国税が公表する相続税の申告事績と調査等の状況から何が分かるか?

「彼を知り己を知れば百戦殆からず(かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず)」

この言葉は、中国・春秋時代の将軍である孫武が記した兵法書「孫子」の一節であり、日本でも大変有名な言葉だと思います。

税理士は、納税者の側に立って様々なサービスや助言を行うことが通常なので、税金を徴収する立場である税務署は(特に税務調査の現場では)敵と言える相手になります。

となると、相手である税務署、国税当局のことを知ることは、リスク回避の観点から重要になってきます。

毎年10月から12月頃にかけて、国税庁と各国税局は、税目ごとの申告事績と調査事績、調査等の状況を公表しています。

令和4事務年度についても、例年同様に前年分(令和3年事務年度)のそれを公表しているので、ここでは相続税の申告事績と調査等の状況から何が読み取れるか、考えてみたいと思います。

申告実績について

申告事績を見ると、全国の相続税の課税割合は9.3%と基礎控除引き下げがあった平成27年以降で過去最高を記録しています。

相続財産に占める割合も、現預金・有価証券が大幅増加しています。

これは、令和3年の株価が高値で推移したことが要因と考えられます。

なお、東京局の相続税の課税割合は14.7%と全国平均を大きく上回っています。

調査に関するデータ

調査に関するデータを見ると、コロナの影響で実地調査件数が大幅に減少した令和2年事務年度から、実地調査件数(対前事務年度比123.7%)、追徴税額(同116.2%)と増加しています。実地調査1件当たりの追徴税額は886万円となっています。

また、コロナの影響も考慮し、⽂書、電話による連絡⼜は来署依頼による⾯接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正するといった簡易な接触を積極的に実施しており、コロナ禍前が10,000件前後で推移していたのに対し、令和3事務年度は14,730件と大幅に増加しています。

他方、無申告事案は、適正な申告・納税を⾏っている納税者に対する公平感を著しく損なうものであることから、税務調査も積極的に行われています。

無申告事案の実地調査件数(同124.7%)は増加しています。

無申告事案は、実地調査1件当たりの追徴税額1,293 万と、全体での実地調査1件当たりの追徴税額886万円より大きいことから、国税側も重点を置いていると考えられます。

相続税対策の王道である贈与税についても実地調査は行われています。

相続税と同様に、無申告事案に重点が置かれ、実地調査1件当たりの追徴税額287万円(同142.8%)となっています。

調査事績に係る財産別⾮違件数では、現金・預貯金等が69.2%となっています。

現預金贈与は、贈与の場面で一般的に行われていますが、そのような部分も調査の網にかかる可能性があることを示しています。

ここに記載しきれなかった情報も、国税庁のホームページには掲載されていますので、より詳しく知りたい方はご覧になると良いでしょう。

今回の執筆者

花光慶尚

花光慶尚税理士事務所
税理士

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