高齢者への賃貸に躊躇する家主が多い一方で、少子高齢化の現状を踏まえ、その必要性は迫りつつあるのが実情です。
まず、高齢者との賃貸借契約には以下の懸念を持つ家主が多いと感じています。
- 入居者が亡くなり事故物件になること
- 年金のみで家賃が支払えなくなる可能性があること
- 入居者が認知症になる可能性があること
一方で、高齢者の入居には以下のようなメリットもあります。
- 入居期間が長く、空室リスクが減少すること
- 他の物件との差別化が図れること
- 高齢者の増加に伴い、需要が増えること
東京都内の一部地域での調査結果ですが、お部屋探しサイト「SUUMO」で「高齢者歓迎」にチェックの入った物件は全体の0.2%に過ぎません。
つまり、高齢者がお部屋探しをする際に、1,000件中の2件にまで絞り込まれることになり、他998件の競合物件に対して差別化を図ることが可能になります。
また、65歳以上の人口が全体の28.4%を占め、2042年まで増加する予測のため、当面の間は有効な空室対策と言えます。
内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/s1_1_1.html
しかし、冒頭の懸念点を抱えている家主が多いのも本音です。
高齢者との賃貸借契約には懸念点があるものの、適切な対策によりリスクを最小限に抑え、空室対策を行うことが可能となります。
例として、以下のような対策があります。
1)見守りサービスへの加入
見守りサービスへの加入を契約条件にすることで、事故物件になるリスクを下げることができます。
例えば、クロネコヤマトさんが提供しているサービス「ハローライト」では、24時間点灯しない、または点灯し続けているといった異常時に連絡を得られます。
国土交通省は2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表し、自然死や病死など事件性がなく、特殊清掃が不要な状況では、死亡事実を告知する必要がないと明示しました。
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html
そのため、事故物件化を防ぐために早期発見の必要性が増し、見守りサービスの活用が求められるようになりました。
2)家賃保証会社への加入
家賃保証会社により滞納リスクを限りなくゼロに近付けます。
保証会社の審査には定期収入だけでなく、現預金や株式などの保有資産も申告することで審査の通過率は大幅に向上します。
また、家賃保証会社への加入費用は借主が負担し、もしも家賃滞納で明け渡しが必要となった場合の手続きや明渡訴訟等の対応や弁護士手配は家賃保証会社が行い、それらの費用も家賃保証会社が負担するため、原則として家主には負担は生じません。
3)定期借家契約
認知症発症などのリスクに備え、1年または2年での定期借家契約を締結し、契約期間毎に再契約時は面談を行って状況を確認します。
4)死後事務委任契約
原則としては、法定相続人との連絡先を把握しておきます。
相続人のいない借主だった場合は、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」や「死後事務委任契約」を活用します。
残置物の処理等に関するモデル契約条項
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000101.html
これらの対策を取り入れることで、高齢者受け入れのリスクを最小限に抑えることができ、空室対策のみならず高齢化問題への対策にもなりますので、高齢者への賃貸を積極的に取り組むことが期待されます。
今回の執筆者
株式会社東京レント
宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士