賃借人が騒音を出している、他の賃借人や近隣住民に嫌がらせをするなどの迷惑行為を行っており、それが違法と評価される場合には、賃借人自身が不法行為責任を負うのは当然です。
では、賃借人の迷惑行為について、賃貸人は何らかの責任を負うのでしょうか。
賃借人と賃貸人は、別の人格であるため、賃借人が起こした迷惑行為の責任を直ちに賃貸人が負うということにはなりませんが、賃貸人が責任を負うこともあります。
まず、賃借人の迷惑行為により被害を被っているのが他の賃借人である場合です。
賃貸人は、賃貸借契約に基づき、賃借人に対し目的物を使用収益させる義務を負っており、賃借人の使用収益が阻害されているような場合には、その阻害事由を取り除き、賃借人が使用収益できるようにする義務があります。
このため、賃借人の迷惑行為が繰り返され、かつ賃貸人が何もしないような場合には、賃貸借契約による債務不履行責任や不法行為責任を負うことがあります。
次に、賃借人に貸している物件が分譲マンションである場合で、そのマンションの住人が損害を被っている場合です。
この場合にも、賃借人が出した騒音について、区分所有者である賃貸人に不法行為責任を認めた裁判例があります(東京地判平成16年12月14日判例タイムズ1249号179頁)。
この裁判例では、分譲マンションの所有者(区分所有者)は、建物の使用に関して、区分所有者の共同の利益に反してはならないと定められている(区分所有法6条1項)ところ、使用しているのが専ら賃借人であるとしても賃貸人のその義務は消滅しないことから、賃借人の選定や賃借人の使用状況に注意を払い、賃借人による迷惑行為を是正する措置を講じるべき義務が賃貸人にはあると判断しました。
勿論、上記の場合には必ずしも賃貸人が責任を負うということにはなりませんし、上記以外の場合でも賃貸人が不法行為責任を負う場合があることもあります。
ただ、賃貸人は、賃借人のしたことだから知りませんというわけにはいかない場合もあるので、賃借人選びは慎重に行うのがよいですね。
ちなみに、違法風俗店や詐欺グループの拠点として使用されることを知りながら物件を貸した場合はもちろん、後から知って何もせずにそのまま貸し続けた場合も、犯罪行為を幇助した、犯罪行為により得られた収益であると知りながら家賃として受け取ったなどとして摘発されることもあるので、注意が必要です。
物件を貸した賃貸人が摘発されるケースもありますので、ご注意ください。
今回の執筆者
小野寺法律事務所
弁護士