相続財産は何を持っているのか?~相続対策の二歩目~

相続財産は何を持っているのか?~相続対策の二歩目~

宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の三好貴大です。

前回は、相続対策の第一歩として、まずは「誰に何を相続させたいか?」を確認しましょうとお伝えしました。
【前回の記事】誰に何を相続させたいか?~相続対策の最初の一歩~

誰に何を相続させたいかという希望を知ることができたら、次に取り組むべきは「財産の棚卸」です。

1. 財産の棚卸=どんな相続財産があるのかを調べる

相続財産が現預金のみとシンプルであれば良いのですが、様々な相続財産があるケースが多く、代表的な相続財産は以下が挙げられます。

また、被相続人(※)が協力的になってくれている前提で、それらを調べる簡易的な方法も紹介します。

※被相続人・・・例として、父親が亡くなり子供が相続する場合は父親が該当します。相続人(前記の例では子供)と混同してしまうことが多いので注意しましょう。

① 現預金

主に「通帳」と「現金(タンス貯金)」を確認しましょう。

最近はネットバンクの普及で通帳がない可能性もあるので注意が必要です。

② 不動産(土地・建物・借地権等)

「固定資産税納税通知書」が毎年届くので確認してみましょう。

土地の納税通知書がない場合は借地の可能性があるので、毎月または数か月に1回など、地代を払っていないかを確認して調べます。

③ 株式・投資信託

「取引残高報告書」が毎年届くので確認してみましょう。

もし法人を保有している場合は、株式も保有している可能性が高いため、「株主名簿」がないか探しましょう。

④ 保険

「解約返戻金のある保険」や「受取人が相続人になっている保険」に加入していないか確認してみましょう。

⑤ 高価な腕時計や骨董品など

腕時計や骨董品のコレクションをしている場合は分かりやすいですが、相続税の評価が難しいので後々困る可能性が出てきます。

2. ざっくりとした相続財産評価額を知る

相続財産になるものが棚卸できたら、相続の視点でどのくらいの価値になるか考えていきます。

本来は「相続税評価額」として細かく計算が必要ですが、複雑なのでざっくりとイメージを掴める程度に計算してみましょう。

① 現預金

現預金はいくらの預貯金と現金があるか計算すれば良いだけなので一番楽です。

② 不動産(土地・建物・借地権)

建物は「固定資産税納税通知書」に記載のある固定資産税評価額と同一です。

土地は「路線価」というものを基準に計算し、様々補正を掛けていきますが煩雑なので、ざっくり土地の固定資産税表額の1.1倍(1割増し)ぐらいのイメージを持っておきましょう。

借地の場合はインターネットで「路線価」と調べると国税庁の「路線価図・評価倍率表」というページが出てきますので、対象の土地の地図を探します。

路線価図・評価倍率表
https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm

土地の面した道路部分に数字とアルファベットが書いてあり、例えば「500C」と記載があれば、以下のように計算します。(借地面積を50平米と仮定します)

500千円×50平米=2,500万円×借地権割合70%=【1,750万円】

借地権割合は、路線価図の一番上にA~Gの記載があるため、その中から該当するアルファベットと割合を探しましょう。

③ 株式・投資信託

上場株式や投資信託であれば報告書に記載されている残高で良いですが、自身で保有している法人の株式がある場合は顧問税理士に聞いてみましょう。

④ 保険

解約返戻金のある保険に加入している場合は解約返戻金、受取人が相続人になっている保険に加入している場合は保険金の金額を確認しましょう。

⑤ 高価な腕時計や骨董品など

腕時計や骨董品など高価なものがある場合は、あまりに量が多い場合や高額なものがある場合を除けば、価値の算定が困難なので一旦は考慮しなくて良いです。

3. 合計でどのくらいの相続財産があるかイメージを掴む

上記はあくまでざっくりとしたイメージを掴むためのものなので、実際には細かい計算を基に相続税評価額や相続税のシミュレーションを行います。

それらは税理士や不動産鑑定士などを交えて計算する必要があります。

しかし、最初に取り組むべきは「遺産分割対策」として、誰に何をどのくらい相続させるかの初案を考えることです。

詳しい相続税評価額などは後から検討を重ねて修正していけば良いので、まずは今回紹介したような方法でイメージを掴むことが重要です。

そして、いつか被相続人になりうる本人の希望を聞き、どのくらいの財産を保有しているのか棚卸を終えたら、相続トラブルの最大要因となる「遺留分(いりゅうぶん)」について検討していきます。

「遺留分」については次回解説します。

最後までお読みいただきありがとうございました。

今回の執筆者

三好貴大

株式会社東京レント ソリューション事業部
宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士

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