宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の三好貴大です。
前回は、相続対策の第二歩目として、まずは「相続財産は何を持っているのか?」というタイトルで相続財産の棚卸を紹介しました。
【前回の記事】相続財産は何を持っているのか?~相続対策の二歩目~
誰に何を相続させたいか、相続財産は何を持っているのかを知ることができたら、ここから本当の相続対策はスタートとなります。
なぜなら、被相続人の希望通りに相続をすれば相続トラブルも発生せずに済むかと言えば、そうではありません。
まずは相続トラブルの代表例から紹介します。
1. 相続のよくあるトラブル例
ある日、父親が亡くなってしまいました。
母親はそれより前に病で亡くなっていたため、法定相続人(※)に長男と次男がいました。
※:法定相続人・・・民法で定められた財産を相続する権利のある人
代々長男が全財産を相続するという家訓があり、相続発生後に発見された父親の遺言書には、長男に全財産を相続させる旨が記載されていました。
家族で遺言書を見ながら、「父親の意思を継いで長男が全財産を相続」と意見がまとまり、次男は家に帰って妻にその話をしました。
すると、妻から「これから子供の教育費もいっぱい掛かってくるし、住宅ローンも一部返済に充てれば生活も楽になるんだから、あなたも財産をもらえるように交渉して!」と強く言われました。
次男はインターネットで調べたところ、「遺留分」という権利を主張すれば、全財産の4分の1はもらえるかもしれないと思いました。
長男にその旨を伝えたところ、「うちは代々長男が相続することになっているんだし、父親の面倒はずっと俺が見てきたんだから、俺が全部もらうぞ!」と喧嘩腰で、次男も「だからって僕には何も無っていうのはおかしいだろ!」と喧嘩になってしまいました。
そして、弁護士が介入するトラブルに発展してしまいました。
2.「遺留分」を知るための基礎知識
相続人間では同意が得られていても、配偶者や第三者からの意見を起因として相続トラブルに発展するのはよくあることです。
また、上記の例では「遺留分」という言葉が出てきましたが、これが相続トラブルではよく出てくる問題ですが、そもそも「遺留分」とは何でしょうか?
「遺留分」を知るためには、まず基礎知識として「相続の範囲(順位)」と「法定相続分」について理解する必要があります。
3.「相続の範囲(順位)」と「法定相続分」とは?
相続が発生した際に、遺言書などが残っていない場合、民法で誰がどのくらいの財産を相続できるかという一つの基準が定められています。
まず、相続人が一人であれば、全財産を相続できますが、相続人が複数の場合は、配偶者は常に相続人となります。
そして、配偶者に加えて子供がいれば「配偶者+子供」、子供がいなければ「配偶者+父母や祖父母(直系尊属)」、子供も直系尊属もいなければ「配偶者+兄弟姉妹」となります。
※今回は分かりやすくするため「代襲相続」を考慮せずに解説します。
反対に、被相続人に子供がいれば、被相続人の親や兄弟は相続財産をもらえず、親がいれば兄弟はもらえないということになります。
また、それぞれの法定相続分の割合は以下の通りになります。
① 配偶者:常に相続人で2分の1以上
② その他:【第一順位】子2分の1、【第二順位】父母や祖父母3分の1、【第三順位】兄弟姉妹4分の1
上記の例では、母親は父親より先に亡くなっていたため、第一順位の子供が全財産を相続します。
子供は長男と次男の二人なので、法定相続分は長男2分の1、次男2分の1となります。
【もし母親が存命だった場合】
・母親2分の1
・長男4分の1
・次男4分の1
が法定相続分となります。
あるいは、以下のような例も考えられます。
【母親と祖父(母親の父)のみが相続人の場合】
・母親3分の2
・祖父3分の1
【母親と父親の弟が相続人の場合】
・母親4分の3
・父親の弟4分の1
このように、相続発生時に残っている家族構成により、誰がどのくらい財産を相続できるかという一つの基準が「相続の範囲(順位)」と「法定相続分」となります。
【国税庁】No.4132 相続人の範囲と法定相続分
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm
次回の後編では、本題の「遺留分」について解説します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の執筆者
株式会社東京レント ソリューション事業部
宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士